世界的メーカーに躍り出た 見えない努力を見た経験

世界的メーカーに躍り出た 見えない努力を見た経験

『越境トーク』~「未来を生きる子どもたちにいま何を教えるべきか」~

【お米からご飯までをデザインする】

-15-2 安東米店:長坂さん-

 

ごはん炊きをスイハニング(炊飯+ing)という言葉で表現し、お米がご飯になるまでのプロセスのすべてをデザインするお米屋さんの長坂さん。

 

第1話では、「スイハニングマイスター」長坂さんによる炊飯へのこだわりをお伝えしました。

第2話では、長坂さんが仕事で大切にしていることをお伝えします。

あなたが大切にしていること(価値基準)を振り返りながら読んでみてください。

 

 

大切にしていること(価値基準)

 

切り株に座って感じた職人のプライド

 

長坂さんは、学生の頃時々山登りに興じていたそうです。

ある日、奥多摩の山を登っていると伐採地があり、
そこにあった切り株に座った時に「仕事ってこういうことだ」と実感したと言います。

 

『 』は、長坂さんの言葉を表します。

『 切り株って、切り口がとてもきれいなものと雑なものがあります。

木こりは木を切ることが生業で、きれいな切り口(切り株)を作ろうという意識はないと思うのです。

 

だからこそかな、切り株を見ると、雑な仕事かプライドを持った仕事か、仕事っぷりが分かるのです。

 

切り株のように誰も見ていない、見えない部分にも心遣いができる仕事ぶりが良いなあと思ったのです。

プライドをもってやる仕事とは、見えない部分に表れると思うのです。

 

 

 

私の仕事観を育てた世界的メーカーの前夜

 

 私は、学生時代タイヤメーカーの4輪レース部門(サーキット)でアルバイトをしていました。

そこで、Hさんという、のちに日本を代表するディレクターと出逢いました。

 

ディレクターは、レース当日の天候を見て、必要なタイヤの準備を指示します。

 

ある日、天気予報では雨は降らないと思えるような日がありました。

私も周囲も、「今日は、(溝のある)レインタイヤの準備は要らないな」と思っていました。

(※レインタイヤは、準備や片付けが大変で、片付けが午前様になってしまうので、できればやりたくないです。)

 

ところが、Hさんは、「レインタイヤを準備しろ!」というのです。

しかも、一番ヘビーなものからちょっと降った時に使うものまでフルセットです。

 

案の定、雨は降らなかったです。

「何のためにこんなことをするんだ、やらなくてもいいことをやって!」


周囲は、Hさんのことを、「体がでかいくせに蚤の心臓だ」と、揶揄しました。

 

 

 

しかし、対象的な出来事が起こったのです。

 

とても大雑把なディレクターがいました。

「今日は天気大丈夫だな、レインなしで行こう!」…こんな感じです。

 

Hさんは、晴れ用&雨用、10セット近く組み、それが何台か分になるので、100セット近い準備となり、とても大変です。


それに比べて、この大雑把なディレクターの時は、3セットも組めばいいので楽です。

 

ところが、ある時、この大雑把なディレクターは大失態を犯し、高級車を1台壊してしまったのです。

会社に大きな損害をもたらしてしまいました。

 

のちにHさんは、マスコミにも取り上げられるような、日本を代表するエースディレクターになっていきました。

 

私は当時、この2人の差って何だと自問自答しました

 

誰もが雨は降らないと言っているけれど、

「もし降ったらどうするんだ」

そういうことを常に想像を巡らせ、無駄なことは分かっていながらも、万が一に備える

 

仕事ってそういう事なんだと痛感しました。

 

 

このメーカーのタイヤは、この後ドイツの有名自動車メーカーの標準タイヤに選ばれます。

そしてその後、F1ではフォーミュラカーはこのメーカーのタイヤでないと勝てないという時代が続きます。

そうなった陰には、周りに揶揄されながらも、地味なことをやっていたディレクターの存在があったことを私は知っています。

 

このメーカーが世界に打って出ようとしている前夜を見た経験が、自分の仕事観を育ててくれました。

 

 

お客様に常にベターな状態を提供できる準備

 

『 私は、この学生時代の経験を生かし、後にお米屋として、田んぼからお茶碗まで、お米に関わることを、妥協なく一貫して勉強しました。

そして、常にお客様にとって、よりベターな状態を提供できるようにしています

 

ベターとは、やれる範囲の中でより良い状態をつくることです。

決して、100点をつくることではありません。

100点を目指すと単なる自己満足に陥ることもあるからです。

 

お客さんが求めるものに近づけること、しかもお客さんが日常的にできること、ストレスなく続けられることに落とし込むことを大事にしています。

 

例えば、飲食店がこういうメニューでこういうご飯を出したいと相談してきます。

私は、この産地のこの品種のお米を、こういう道具で、こういうふうに調理して、こういうふうなプロセスでどうかと提案します。

これが、私が提供するデザインです。

 

 

単にお米を売るだけではなく、相手が求めるものを得られるように、そのプロセスまでフォローしようと長坂さんは考えています。

だから、お米や炊飯の歴史から、炊飯の技術に至るまで徹底的に研究しています。

 

本物のご飯の美味しさに出会わせてくれる、長坂さんはそういう素敵なお米屋さんです。

 

 

 

今日の話が、あなたの気付きになれば幸いです。


「未来を創る子どもの先生」が育つ環境を創っていくために。
志と情熱のある方々と、ご縁で繋がっていけたら幸いです。

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