『子どもの最善の利益』

『子どもの最善の利益』

「あなたは困っている子どもがいる時に、

魚を釣ってあげるタイプですか? 

それとも、魚の釣り方を教えるタイプですか?」

 

以前先輩から聞いた話です。

ネグレクトで親が面倒を見てくれないため、お風呂にもほとんど入らず、いつも汚れた服を着てくるAちゃん。


ある日のこと、その日Aちゃんは少々異臭のする汚れた洋服を着てきました。

養護教諭のB先生は、保健室にストックとして置いてある洋服に着替えさせるとともに、保健室の洗濯機を使って、Aちゃんに洗濯の仕方を教えます。


このようなケース、単に洋服を着替えさせてあげるだけなら、「魚を釣ってあげるタイプ」、洗濯の仕方を教えることは「魚の釣り方を教えるタイプ」です。

つまり、洋服を着替えさせる(魚を釣ってあげる)ことで、Aちゃんはその場は救われます。

しかし、この先もずっとB先生が、Aちゃんを支援できるわけではありません。
ところが、洗濯の仕方(魚の釣り方)を教えれば、Aちゃんは自分で洗濯ができるようになり、B先生の存在がなくても、生きていけます。

 

要するに、お腹を空かした人に、魚を与える事は一時的な空腹を満たすためには簡単な方法だけど、その人は空腹になる度に誰かを頼り、魚をもらい続けなければならないし、もらい続ける癖がついてしまいます。

これに対して、魚の釣り方を教え、身につけて貰えば、空腹になっても自らの力で魚を捕まえて食べられるようになります。

 

どちらが本当にその人のためになるのか考える、格好のお話です。

 

 

子どもの最善の利益
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私は、以前スクールソーシャルワーカーの師匠から、

福祉では、子どもの最善の利益を探す」と言われました。

 

子どもの最善の利益とは、

子どもにとって最も良いことは何か」を考えること。

現在だけでなく、長期的視野に立ったベスト」を考えなさい、ということだと教えられました。

 

以前自分もそうでしたが、とかく大人は、「魚を釣ってあげる」傾向が強いと思います。

しかし、いくら魚を釣ってあげても、それはその子の真の力にはなりえません。

つまり「魚を釣ってあげる」だけでは、その子が自分の足で立って生きていくことはできません。

子どもが自分の足で立って生きていくことができるように支援すること、それが真の子どもの幸せになります。

 

「子どもの最善の利益を探す」本校の事例です。

昨年の夏、本校の目の前の道路で、横断歩道を歩行中の近所の方が、事故に遭われて亡くなりました。

原因が車の信号無視だと推察されたことから、事故後は、子どもの登下校時に横断歩道に立って、子どもを守るという申し出がいくつかきました。


私は、「(横断歩道に限らず)子どもたちが登下校する際、危ない状況がないか見守ってくれるだけでいい」とお願いしました。

もしも、横断歩道に旗を持った大人たちが立ち、赤信号になるたびに旗で車を制止し、子どもを通行させる状況をつくったら、それは「魚を釣ってあげる」ことにしかならないからです。


学校前の横断歩道を、信号無視をして通過する車が、依然として時々見られます。

このため、子どもの登下校時には、横断歩道に立ち、「子どもが自分の目で車を確認して歩行できているかどうか」を見守るよう、職員にお願いしました。

 

「旗を持って車を制止して横断歩道を通過させる」
=「魚を釣ってあげる」

のではなく、

「子どもが、車が止まったことを自分で確認してから横断歩道を渡る」
=「魚の釣り方を教える」

こうした習慣が身に付くように、子どもを見守り、必要な支援をしてほしいのです。


子どもが自分の力で安全を確保しながら登下校ができるようになることが、この場合の「最善の利益」だと考えます。

 

幸い本校の子どもたちは、「信号が青でも、自分の目で車が止まったことを確認して渡る」習慣付けができました。

これならどこに行っても大丈夫です。

 

 

 

「魚を釣ってあげること」と「魚の釣り方を教えること」、日常にもたくさんあります。

 

例えば、子どもが何か質問してきたときに、答えをすぐに与えるのか、それとも答えの見つけ方を教えるのかも良い例です。

 

また、子どもの教育に限らず、ビジネスの世界でも、

「魚を釣ってあげることがベターなのか」

「魚の釣り方を教えることがベターなのか」

場面場面で使い分けることが、部下育成の視点から、大事なのではないかと思います。

 

 

今日の話が、あなたの気付きになれば幸いです。


「未来を創る子どもの先生」が育つ環境を創っていくために。

志と情熱のある方々と、ご縁で繋がっていけたら幸いです。

 

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